【盛会御礼】西部部会のご案内

 3月24日(日)に、国際商取引学会の西部部会(国際ビジネスコミュニケーション学会との合同部会)を開催し、盛会のうちに終了致しました。多くの会員の皆さまにお集まり頂きました。心より感謝申し上げます。 下記が当日のプログラムでございます。

 今回、下記の通り、西部部会(国際ビジネスコミュニケーション学会との合同部会)の報告要旨をお送り致します。また、理事会(11:30開始)および懇親会(18:30開始)の開催もご案内させて頂きます。

 なお、会員の方で、部会へのご参加(対面もしくはオンライン)および懇親会のご参加を希望される場合には、3月21日(木)までに、以下のURLにご回答くださいますようによろしくお願い申し上げます。皆様のご参加を心よりお待ちしております(既に、HP内の「お問合せ(申し込み)ページ」からお申込み頂いた会員の皆さまは、再度お申込み頂く必要はございません。ご協力に感謝申し上げます)。

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLScOnWJS9ncQ9b2em7OOMVt_pVxWuTnZEioiL7f8rRt5axop5w/viewform?usp=sf_link

((理事会))

・開催日時:3月24日(日)11:30~12:00

・開催場所:同志社大学今出川キャンパス 至誠館22教室(ハイブリッド方式(オンラインでの交信あり))

・キャンパスマップ:

https://www.doshisha.ac.jp/information/imadegawa/imadegawa_map/index.html

・ZOOMのURL:送信メールをご確認ください。

((合同支部会))

・開催日時:3月24日(日)13:00~18:05(受付開始:12:40)

・開催場所:同志社大学今出川キャンパス 至誠館22教室(ハイブリッド方式〔オンライン配信あり〕)

・キャンパスマップ:

https://www.doshisha.ac.jp/information/imadegawa/imadegawa_map/index.html

・ZOOMのURL:送信メールをご確認ください。

【開会挨拶】(13:00~13:05)

【統一テーマ講演】(13:05~15:00)

統一テーマ「―VUCA時代におけるビジネスコミュニケーションの現状と今後について―」

(講演概要)

本講演では、それぞれの業界のビジネスコミュニケーションの特徴やコロナ禍前後におけるビジネスコミュニケーションの変化についてお話して頂きます。

(1)「不安定な状況下でも共感を得られる効果的なビジネスコミュニケーション:アナウンサーの視点から」山本ミッシェール氏(フリーアナウンサー(株式会社メリディアンプロモーション))

(2)「デジタル社会に際立つ国際物流におけるコミュニケーションの重要さについて」植村浩康氏(代表(H&Jコンサルティング))

(3)「製薬業界におけるビジネスコミュニケーションの特徴と今後の展望」周藤俊樹氏(取締役研究部門担当(兼)大阪創薬研究センター長(大塚製薬株式会社))

【特別講演】(15:05~15:45)

「クリエイティブ産業と「ビジネスと人権」: 「セクシー田中さん」事件における漫画原作者の人権侵害問題」齋藤彰氏(名誉教授(神戸大学)、顧問(One Asia Lawyers Group))

【個別研究報告】(15:50~18:00)

座長:高杉直氏(教授(同志社大学))

(1)「船社によるLetter of Guaranteeの用途と比較」キセリョフ・エフゲーニ氏(准教授(就実大学))

(2)「開業5年を迎えたOcean Network Express社」合田浩之氏(教授(東海大学))

(3)「国際調停による和解合意に執行力を付与するシンガポール条約と実務」山口修司氏(弁護士(山口総合法律事務所)・客員教授(中央大学法科大学院))

【閉会挨拶】(18:00~18:05)

【懇親会】(18:30~20:30)

・場所:芙蓉園(大学近くの中華レストラン)

・費用:4,000円

【報告要旨】

(特別講演)「クリエイティブ産業と「ビジネスと人権」: 「セクシー田中さん」事件における漫画原作者の人権侵害問題」齋藤彰氏(名誉教授(神戸大学)、顧問(One Asia Lawyers Group))

日本社会において人生のあり方を漫画から学ぶ人たちは昔から少なくない。そうした深いメッセージを社会に送る漫画家として多くの人々に愛されてきた芦原妃名子さんが今年1月にブログ及びSNSで自身の最新作のTVドラマ化 の過程で遭遇した苦境を説明した投稿からまもなく、栃木県日光市の川治ダムで自ら命を断った事件は多くの人々に衝撃を与えた。このようにSNSで苦境を報告すること(投げ込み)に罪の意識を持つ投稿者は少なくなく、社会にもそのような見方があるが、自らの声を社会に伝える手段を他に持たない人たちを責めることは決して正当とは思われない。

芦原さんは「セクシー田中さん」と題する話題作を当時連載中であった。アラフォーの根暗な銀行OLが、深い文化的背景を持つベリーダンスと出会いその才能を開花させることを通じて変化をとげ、周囲の年齢も性別も異なる登場人物たちがその影響よって変化し始める物語である。そこに描かれた登場人物達がどんどん変化し成長を遂げていく様子を多くの読者は毎回わが事のように 期待を持って見守っていた。芦原さんはこの漫画の結末を定めておらず、まだまだ書き続けていく強い意向を持っていた。単行本は既にミリオンセラーとなっておりその反響の大きさから、 もし存命であれば芦原さんのライフワークとなり得る作品であった。 原作の意図を汲もうとしないテレビドラマの制作 が行われたことがその背景にあったと考えられる。

この作品は日テレにより昨年10月から12月にかけてテレビドラマとして放映された。日テレから小学館を通じて、芦原さんにこの実写化の話が持ちかけられたのは6月頃である。現在のテレビドラマは企画から極めて短時間のうちに放映されるようであり、日テレは契約交渉に入る前に既に主演女優を決定して5月からベリーダンスの練習を開始させていた。

本報告では、 この事件をクリエイティブ 産業の構造的な問題と捉え、特に最近話題となっている国連「国連『ビジネスと人権』に関する指導原則」との関係で議論したい。同指導原則はジャニー喜多川氏の性加害事件において第三者委員会が言及しており、クリエイティブ産業における構造的な人権問題に対応するための1つの有効な指針となる。現在グローバルスタンダードとして広く受け入れら、日本政府も同原則の推進にコミットしている。

本報告は、筆者のSNS での約3ヶ月にわたるSNSでの調査を 中心とするものである。一般社会では、SNSでの感情的な炎上によって出版社・ 放送局・ 制作に関与した人たちがネットの不当な影響力に屈した事件として描かれがちであるが、 筆者はそれとは異なった意見を持っている。この点についても時間が許す範囲で言及したい。

(個別研究報告)

(1)「船社によるLetter of Guaranteeの用途と比較」キセリョフ・エフゲーニ氏(准教授(就実大学))

本研究は、世界最大手の船会社における保証状(Letter of Guarantee, Letter of Indemnity) の用途に関する比較分析である。貨物が到着しても船積書類のうち船荷証券(Bill of Lading, B/L)の原本を提出しない限り貨物を引き取ることができない状態(“B/L危機”、 “B/L Crisis”, “Fast Ships Problem”)の対策として、船荷証券の代わりに運送状やサレンダードB/L(Surrendered B/L, Telex Release, E-mail Release)を用いて貨物を引き取る方法と保証状を発行することにより貨物を引き取る複数の方法がある。特に、保証渡しによる手続きを行う際、荷送人または荷受人から船社のテンプレートに沿ったLetter of Guaranteeの提出が求められていることが一般的になっている。一方、Letter of Guaranteeに当たる書面(例えば、Letter of Indemnity, Letter of Undertakingなど)は、保証渡しに限って使用されるだけではなく、実務上ではサレンダードB/Lやその他の手続きに幅広く利用される書面でもある。このようなLetter of Guaranteeの形態の多様性に注目し、大手の船社が独自に適応した書式を検討することを目的としたい。Letter of Guaranteeという書面はインコタームズやその他の規則と異なり、統一された形式を欠くため、各船社の文書がどのように進化し、共通点と相違点を持つかを解析し、商慣習としての実態を把握することを目標としたい。さらに、Letter of Guaranteeという概念を巡る商慣習は多機能性において複雑であり、機能は異なるが名称が同じであるため、研究上の分類化が困難であるという学術的課題がある。本研究では、先行研究に考察された法的な観点からではなく、実際に使用されている文書(船社による公開されているテンプレート)の内容を基に、ビジネスの慣習と実務の視点からの運用的な影響を強調したい。本研究では、大手船社におけるLetter of Guaranteeの進化する用途とこの書面のテンプレートに基づいた比較分析を通じて、実務上の応用についての理解を深めることを目的としている。

(2)「開業5年を迎えたOcean Network Express社」合田浩之氏(教授(東海大学))

2017年7月7日,コンテナ船運航会社であるOcean Network Express Pte.Ltd.社(以下,本稿では「ONE」と略称する。)がシンガポール会社法に基づき,シンガポールに設立され,2018年4月1日よりコンテナ船による海上運送業を開業した。

このONEの株式は,持ち株会社,オーシャンネットワークホールディングス株式会社(2017年7月7日設立、東京都港区,以下,本稿では「ONEの持ち株会社」と称する。)に100%所有される。ONEの持ち株会社については,その株式は,日本郵船株式会社(以下,本稿では「日本郵船」と略称。)に38%,株式会社商船三井(以下,本稿では「商船三井」と略称。)に31%,川崎汽船株式会社(以下,本稿では「川崎汽船」と略称)の3社(以下,本稿ではこれら3社を合わせて邦船3社と呼ぶ。)に31%所有され,それぞれの出資先にとっては持分法適用関連会社となる。これにより,邦船3社のコンテナ船事業が統合されたことになる。

その後,設立から5年が経過した。会社設立当初の目標については,

・コンテナ船事業の収益の安定は達成したと判断出来る。

・邦船3社のコンテナターミナル事業については,海外の事業はONEへの移管が完了した。(国内の事業については,手付かずである。)

なお,それに加えて

・独自に船隊整備を開始するようになった。(当初は,邦船3社の所有・支配するコンテナ船を定期傭船することが殆どであった。)

・手仕舞いの電子化を促進している。

そのような足跡を踏まえて,ONEの現状を確認し、その将来を展望するものとする。

(3)「国際調停による和解合意に執行力を付与するシンガポール条約と実務」山口修司氏(弁護士(山口総合法律事務所)・客員教授(中央大学法科大学院))

我が国は2023年10月国際調停による和解合意に関するシンガポール条約を批准し、2024年4月1日に同条約の実施に関する法律が施行されます。これによって、国際調停によって成立した和解合意が我が国で執行可能となります。本報告では、この法律の対象となる調停和解合意とその執行力を付与する手続きなど基本的枠組みを解説します。その上で、国際紛争に関し従来から存在する解決方法である裁判手続や仲裁手続及びそこで行われる和解合意の現状とシンガポール条約及び同実施法の調停和解合意との関係性を分析するとともに、同条約及び同実施法により、国際調停が仲裁手続などの国際紛争解決に与える影響と展望そして問題点などについて、実務的観点から考察していきます。

以上