2011年2月

会長挨拶

2011年2月

齋藤 彰 (神戸大学法科大学院教授)

国際商取引学会は、法律学と商学との研究者が協働して国際商取引の研究に取り組むことによって、新たな学問の地平を切り開こうとする学際的学会です。高い理論水準を目指すと同時に、現実の社会との関係を常に重視する実践的な知見の構築を目的とします。
法律学の研究者、商学・経営学の研究者、ビジネスマン、法律家など様々な分野で活躍する人達が会員であり、それぞれが有する最新の情報を持ち寄り、新たな問題提起や刺激的な議論を広い視野から展開しています。最近では、大学院生や若いビジネスマンの会員も増えています。
年に3回開催される研究報告会(全国大会・西部部会・東部部会)の報告は、自薦による応募が原則となっており、意義ある研究に取り組む多くの会員の方々に公平に公表の機会が与えられる仕組みが確立しています。また各研究報告にあたっては異なった学問分野からのコメンテータを選任し、研究の客観的位置づけを明確にすると同時に、新たな視点を導入することによって、活発な議論を誘発する方法をとってきました。
こうした研究報告は、学会によって指名された2名の査読委員による厳正な審査をえた上で、国際商取引学会年報に論文を掲載する機会が与えられます。この年報は、レクシスネクシス社から市販書として刊行されており、国際商取引研究の基本的な文献として広く参照されています。
本学会は創設10年を超え、現在の日本において社会学会分野におけるOnly Oneの学会としての地位を築いてきました。今後は、さらにその強みを最大限に生かすことによってNumber Oneの領域を生み出していくことが強く求められます。そのために本学会がその活動を通じて育んできた、独自の文化的基盤をより明確にし、最大限に活用することが大切です。それは次の3つにまとめることができます。それは「先進性」・「教育力」・「社会性」です。

【先進性】 新たな問題提起や議論は必ず不完全です。だからこそ、それを提示する勇気と努力とを正しく理解し評価する文化がなければ、どのような素晴らしい芽も摘まれてしまうだけです。

【教育力】 次世代が現世代を乗り越えなければ、学問の進歩はありません。優れた次世代が育つことを現世代の人達が自らの喜びとできる文化が、学会の絶え間ない前進のために何よりも必要です。

【社会性】 人は率直に意見を交換し自らにないものを吸収し続けることによって成長します。世代を超え、学問分野や職業の領域を超え、国や文化を越えて、多方向的な交流を可能にする社会性を育む文化が、学会の基盤として何よりも必要なことは明らかです。

しかし、国際商取引学会がこうした文化的基盤を維持していくためには、すべての会員の方々による絶え間ないインプットが必要です。価値ある学会へと成長するには長い時間が必要ですが、それはまた容易に失われてしまうものでもあります。国際商取引学会がこれからも価値のある学際的なフォーラムとして存在し続けるには、これまでに多くの会員の方々によって維持されてきたモメンタムをさらに力強く推進する会員の方々すべての協力が必要です。また、私たちは、本学会の精神に賛同してくださる方々をいつでも同志として暖かく迎えることのできる、開かれた学会であり続けます。